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Branding

2026/8/20

ブランドと余白の関係。

デザインをしていると、
「余白」という考え方をとても意識します。
文字と文字の余白、写真のまわりの余白、何も配置されていない空間の余白など。

では、デザイン以外ではどうでしょうか?
時間の余白、心の余白、会話の余白…などなど。
日常生活をイメージして考えてみても、結構色々と浮かんでくるものです。

言葉にも、体験にも、コミュニケーションにも、
さまざまな余白が存在しています。

さらに、余白についてもう少し考えを巡らせてみます。
余白があることでどんな良いことがありそうでしょうか?

私は、こんなふうに考ることもできると思います。
「感じ方が自由になる」こと。

自ら、何かを感じたり、考えたり、想像したりすること。
余白には、そんな感性が入る余地があるように思います。

同じものを見ても、感じることは人によって違います。
静けさを感じる人もいれば、哀しさを感じる人もいる。
その人自身の記憶や経験と重なり、また別の何かを想像することもあります。

余白には、人の創造性を広げる力がある。

そんな視点から余白を捉えてみると、ブランディングにおいても大切な役割がありそうです。

「形式」と「余白」

余白について考えるきっかけの一つになったのが、ロラン・バルトの『表徴の帝国』という一冊です。

本書では、フランスの思想家ロラン・バルトが、日本を訪れた経験をもとに、箸、料理、包装、文楽、俳句、都市など、日本の日常に見られるさまざまな表徴(象徴・シンボル・体現)について考察しています。

印象的だったのが、日本文化に見られる「形式」と「意味」の関係です。
日本には、礼儀作法や伝統文化だけでなく、日常の中にも細かな順序や決まりといった形式が数多くみられます。

本書を読んでいて興味深かったのは、そうした日本の表現を、その奥にある一つの意味へと結びつけるのではなく、別の角度から見つめるバルトの視点でした。

ここで取り上げられている俳句の事例が分かりやすいので、簡単に紹介したいと思います。

俳句には、五・七・五という明確な形式があります。
限られた言葉で情景や心情を表現しながらも、そこから何を感じ、どのように受け取るのかは読み手によって異なります。

バルトは、俳句を「これは何を意味しているのか」と解釈し、一つの意味へと回収していくこととは異なるあり方に目を向けています。

バルトのこうした視点をきっかけに浮かんできたのが、
「形式」があることで、「余白」も生まれる。
という考えです。

形式があるから、余白が生まれる

形式と余白は、一見すると以下のような相反する関係のようにも見えます。

形式 = 制約
余白 = 自由

けれど、俳句を見てみると、このような二項対立ではないことが分かります。
俳句の形式には、読み手が感じ、考え、想像する余地があり、その解釈は、それぞれの読み手に委ねられています。

表現方法には「形式」があり、
解釈には「余白」がある。
そこには、意味を固定しない寛容さがあります。

これは、デザインにもつながる考え方です。

例えば、グリッド。
これも形式として捉えることができます。
グリッドによって文字や写真を配置するためのルールをつくるからこそ、「何を置くのか」「何を置かないのか」「どこに空間を残すのか」という選択が生まれます。

何かが配置され、区切られることで余白が生まれ、
そこから全体の見え方や感じ方にも広がりが出てきます。

そう考えると、
形式と余白は互いを成立させる関係。
としても捉えることができます。

何も決めないことによって自由をつくるのではなく、
何を決め、何を決めすぎないのか。
そのバランスを考えることも、デザインです。

ブランドにおける余白

ブランドには、そのブランドらしさを考え、かたちにしていくための、さまざまな形式や枠組みがあります。
理念やパーパス、コンセプトやブランドストーリー、VIやトーン&マナーなどもそうした形式や枠組みの一つです。

ブランディングでは、このような一定の形式や枠組みを通して、自分たちが大切にしていることを整理し、言葉やデザインとしてかたちにしていきます。

ですが、ブランドを受け手がどう感じるかは、形式によって固定されるわけではありません。
同じブランドに触れても、感じることや考えること、そこから想像することは人によって異なるからです。

ブランドをかたちにする表現方法には「形式」があり、
受け手の解釈には「余白」がある。

このように、ブランドもまた、受け取り方を一つに固定しすぎず、余白を残すことで、ブランドと受け手との間に、関係性が育まれていきます。

余白が広げるもの

余白があることで、ブランドに自分自身の記憶や経験、感性を重ねることができます。
それぞれが、感じ、考え、想像することで、そこから新しい解釈や関係性が生まれる。

余白には、人の創造性を広げる力がある。
改めて、そんなふうに思います。

創造性や関係性は、私たちの視野を広げ、
世界との関わり方に新しい可能性をもたらしてくれます。

そして、その広がりは、日々の暮らしや、
人生の豊かさにもつながっていくように思います。

ブランディングにおける余白には、
そんな可能性があるのではないでしょうか。

参考文献
ロラン・バルト著、宗左近訳『表徴の帝国』筑摩書房、1996年。

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